ポケモンGOのゲームデザインと少し先の未来の話

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ポケモンGOは、何故ここまで大流行したのだろうか。

ポケモンという強力なIPのおかげ? 位置情報ゲームと拡張現実を織り交ぜたバーチャル感が良かった? ルアーモジュールなどの新しい課金形態で店舗側まで巻き込んだから? コミュニケーションの楽しさが多数含まれているから? 様々な切り口からの意見が飛び交っている。

一方で、ポケモンGOの「ゲームとしての評価」については、バグが多いだとか、ゲームバランスが悪いだとか、中間目標がないだとか、ポケモン愛が足りないだとか、とにかく否定的な意見が多い。確かにとても粗いゲームであることは間違いない。しかし、それを覆すほどにポケモンGOは遊びとして楽しい。そうでなければここまでの大ヒットになるはずがない。

じゃあ、ポケモンGOのどこがそんなに楽しいのか? ゲームの中身の、根幹となる楽しさの話をしたい。

ポケモンGOのゲームデザイン

ポケモンGOの根幹となる面白さは「くじ引き」だ。

くじ引き、つまりギャンブルだ。ギャンブルは古くから世界中で楽しまれ続けている娯楽の1つだ。ギャンブルを楽しむために必要な技能は特にない。知識もIQも、動体視力も手先の器用さも不要だ。年齢、性別、国籍など問わず、小難しいことを考える必要もなく、誰でも当たりハズレに一喜一憂できる。

多重に折り重なった「くじ引き」

ポケモンGOの面白さの根幹となる要素は、やはりポケモンの発見と捕獲だ。その過程に「くじ引き」が多数含まれている。
  1. 移動中、ポケモンが出現するか?
  2. 出現したポケモンが未発見のポケモンかどうか?
  3. 出現したポケモンがレアポケモンかどうか?
  4. 出現したモンスターのCP値(戦闘力)は高いか?
  5. 投げたモンスターボールがポケモンに当たるか?
  6. ボールが当たったときにNiceやGreatが発生するか?
  7. 当たったボールで捕獲に成功するか?
  8. ボールから脱出された場合に逃走するかしないか?
  9. 捕獲したモンスターの個体値や技の性能はどうか?
ポケモンの発見から捕獲までの短い間にこれだけの「くじ引き」が行われているのだ。(ボールのヒット判定に関してはプレイヤーの実力によるものだが、100%命中させるのは難しく、くじ引きに近いプレイ感覚がある) さらに言うなら、進化によって技が再抽選される要素や、ポケストップで得られるアイテム、タマゴの孵化なども思いっきりくじ引きだ。

くじ引きの要素を絡むゲームは数多くがあるが、ここまで多重にくじ引きを行なっているゲームはかなり珍しいのではないだろうか。ソーシャルゲーム系は数字の蓄積を楽しむことを中心としているものが多く、くじ引きの要素は単純な場合が多い。海外も同じく蓄積を楽しむ系のゲームが主流だと思う。(間違ってたら指摘ください)

ポケモンGOとパチンコ

ポケモンGOの抽選と非常に似た構図になっている遊びがある。それは「パチンコ」だ。
  1. 玉が釘の左を通るか右を通るか?(を無数に繰り返す)
  2. 玉がチェッカーに入るか?
  3. スロットが回る際に激アツ演出が入るか?
  4. スロットがリーチするか?
  5. リーチ演出の種類はどれか?
  6. リーチ演出が成功するか?
  7. 当たり中、アタッカー(開いた口)に玉が入るか?
  8. 当たり後、通常当たりから確変に昇格するか?
  9. 確変中、確変終了するかどうか?
パチンコもこのように高密度のくじ引き感をプレイヤーに提供している。ポケモンGOに非常に近い構図だ。つまり、ポケモンGOのくじ引きの楽しさは、パチンコの面白さの構造に近いのだ。パチンコの面白さや普及率については、もはや説明不要だろう。

ポケモンGOは秀逸な「くじ引き」ゲームである


「くじ引き」は多くの人が好きな遊びである。そして、ポケモンGOは「くじ引き」に特化したゲームである。だから、ポケモンGOはゲームデザイン単体で見ても大多数に受ける構造になっている、というのが自分の考えだ。

ちなみに、本家のポケモンでは捕獲する際にもバトルが行なわれていたが、ポケモンGOではそれが廃止されている。それは「くじ引きゲームに特化する」というコンセプトによるものなのかもしれない。

それと、ポケモンGOのくじ引きはプレイヤーの幅広い習熟度に対応しているのも面白い。最初は「見たことないポケモンが出た」「捕まえられた」という楽しみを、習熟したプレイヤーには「CPは高いか」「個体値や技はどうか」という部分での楽しさを提供するようになっている。初心者から上級者まで同じアプリでくじ引きが楽しめる、という点でも非常に秀逸だと思う。

「くじを引く」楽しさをどこでも楽しめる

ポケモンGOをパチンコを比較したときに、決定的に優れている点がある。それは、ポケモンGOが「いつでもどこでもくじ引きを楽しめる」という点だ。

パチンコは、家から出て、パチンコ屋に入って、台の前でレバーを掴み続けなければならない。くじ引きを楽しむためのハードルが意外と高い。一方でポケモンGOは、アプリを起動したらその時点からずっと抽選が回り続ける。最悪、歩く必要すらない。「もしかしたら1秒後にカビゴンが出現するかもしれない」そのワクワクをいつでもどこでも楽しむことができる。

ポケモンGOにおいて「歩く」という行為は「くじを引く」行為である。(正確にはくじを引くサイクルを高める行為であるが) また、「歩く」行為は当選率を高めるための手段でもある。ルアーモジュールが炊かれている所を見つけれてそこまで歩けば確変突入となるし、ポケモンが大量出没するエリアを見つければ大フィーバーだ。

ポケモンGOにおける「賭け金」は何か。それは歩行による「カロリー消費」だ。歩く量を増やしたり適切な方向に向かって歩くことで、それがリターンとして帰ってくる。しかもこの賭け金は多くの人にとっては脂肪として蓄積された「負債」だったものだ。このギャンブルを楽しむ上で、後ろめたさを感じる必要が一切ない。

手軽に、いつでもどこでも楽しめて、生活の一部がギャンブルになる。後ろめたさも一切ない。そんな理想的なギャンブルツール、ポケモンGO以外に存在するだろうか。

ポケモンGOは現時点では不完全である

ポケモンGOには重大な欠点がある。それは「アプリを起動していない間はくじ引きが行なわれない」という点だ。起動している間はずっとくじを引き続けるが、ずっと起動しっぱなしにしていなければならず、また操作も煩わしいため、ポケモンGOを遊ぶ場合はそれに集中しなければならない。

効率的なプレイには「ながら歩き」が必須となり危険だし、プレイに集中するあまり本来やるべきことをやれなかったり、同行者をないがしろにしてしまったりする場面も生まれてしまう。(昨日も、子供が親に対して「ポケモンしないで!」と泣いていたのを見た)

これは、後日発売される「Pokémon GO Plus」によって解決される。このガジェットがあればスマホを取り出す必要なくアイテム回収やポケモンの捕獲ができるようになる。歩きスマホの危険もなくなり、本来やるべきことをないがしろにすることもなく、これ以上とない手軽さでポケモンGOをプレイすることできるようになるのだ。しかも、起動、終了といった概念がなくなり、一日中抽選が行なわれる状態となる。

つまり、GO Plusによって「生活の全てが『くじ引き』になる」のだ。ギャンブルの麻薬的な快感を一日中ずっと味わい続けられる生活。世界中の人々が歩きながら、談笑しながらも手首に付けたボタンをぽちぽちぽちぽち押している。そんなトッテモステキな世界が目の前まで来ているのだ。

ポケモンGOは「Pokémon GO Plus」によって完全なものとなる。本当のブームは、そこから始まるのだ。

……

もしも予定通り7月中に発売されていれば、冗談抜きでありえたのかも…?

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