『スーパーマリオラン』、ちょくちょく気になる点はあるものの根幹のシステムは本当によくできていて、スプラトゥーン以来の衝撃だったので、マリオランをプレイしたい欲を抑えつつ書いてみました。お金の話じゃなくって、中身の話です。
「タップのみ」という最もシンプルなインプット
『スーパーマリオラン』でプレイヤーが行うインプットは究極的にシンプルだ。ただタップするだけ。タップ位置による変化とか、スワイプによってアクションが変わるといったこともない。「押すか」「押さないか」。0か1かの2値がこのゲームにおけるインプットだ。これ以上単純化することのできない操作形態だ。(追記:ジャンプ中左スワイプでブレーキがかけられ、これが攻略に活用される場面もある模様。とはいえ、限定的)インプットはシンプルだが、その結果行われるアウトプット(マリオのアクション)は、本家マリオを遙かに超える多彩さで、かつ非常に奥深いゲームとなっている。
『スーパーマリオラン』は、「究極にシンプルなインプット」と「究極に複雑なアウトプット」を両立させたゲームだ。これを両立させた、というだけでもう世界唯一であり歴史の1ページであり最高に価値のある作品だ。1200円が高いか安いかなど、議論するまでもない。
幅広いアウトプットが生み出す無限の選択
基本システムを軽く解説する。マリオのアクションは基本的に、「地上でタップ=ジャンプ」「空中でタップ=スピン(滑空技)」の2種類。ほかにも状況に応じて使える技がいくつかあるが、この2つだけもアウトプットは多彩だ。
例を挙げると…
- 大ジャンプ(長押し)
- 小ジャンプ(短押し)
- 大ジャンプ頂点でのスピン
- 小ジャンプ頂点でのスピン
- 大ジャンプ下降中のスピン
- 小ジャンプ下降中のスピン
- 高所から落ちながらのスピン
- 空中での2回スピン
もっとも、これはマリオシリーズが持つ特徴で、『マリオラン』独自のものではない。『マリオラン』で一番変わったのは「敵」「段差」との関わり方だ。
敵との関わり方のバリエーション
1匹のクリボーに対してプレイヤーが行える対処法を列挙してみる。詳細な説明は省くので「沢山あるんだなあ」と思って頂ければ十分だ。(☆マークが『マリオラン』で新規追加されたアクション)- ジャンプして飛び越えて回避
- ジャンプして踏む
- ジャンプして踏んで大ジャンプ
- 坂道を滑って体当たり
- ☆ウマとび(敵に接触で自動発生)
- ☆ウマとびジャンプ(ウマとび中にタップ)
- ☆受け身の回転で体当たり(高所から着地で自動発生)
- ☆受け身ジャンプで体当たり(受け身中タップ)
段差との関わり方のバリエーション
同様に、段差との関わり方もバリエーションが増えている。- ジャンプして普通に登る
- ☆ガケのぼり(地形の角にジャンプして接触)
- ☆ガケのぼり→回転ジャンプ(がけのぼり後タップ)
- ☆崖捕まりジャンプ(ガケに捕まっている時にタップ)
このように「タップのみ」のシンプルな操作にも関わらず、アクションのバリエーションが幅広くなっている。
マリオは勝手に走る。次々とやってくる「敵」や「段差」に対して、毎度毎度この多数ある選択肢から1つを選んびながら進むことになる。どちらもコース上には多数配置されているので、プレイヤーはコースクリアまでに、ゼロコンマ何秒のペースで何百回という選択を迫られることになる。インプットは押すか押さないかの2択でしかないのに、コースのクリア方法は無限大に存在するのだ。
ハイスコアを目指そうとすると深淵が顔を見せる「ワールドツアー」モード
ステージを普通にクリアしていくモードが「ワールドツアー」。普通にクリアするだけならシンプルなジャンプアクションだ。隠されている特殊コインを探すのも、少し工夫が必要だがそれほど難しくはない。ワールドツアーが真の姿を表すのは「ハイスコア」を求め始めたときだ。
ワールドツアーのスコアは「コースクリアまでにかせいだコインの枚数」だ。ステージは固定なので、最も効率良くコインを回収するルートを構築するだけでいいのだが、先ほど書いた通り、コースは無数かつ多岐にわたる選択で構成されているため、最適解へ辿り着くのはかなり難しい。
それだけではない。「制限時間いっぱいまで稼いでよい」「シャボンを使ってコースを戻ってもよい」というルールがあるおかげで、「いつ戻るか」「どこまで戻るか」「戻った後どのルートを通るか」など選択肢が一気に増える。また、性能の違う6人のキャラがおり、誰を使ってハイスコアを目指すかも重要な選択となってくる。
また、1ステージごとに3種類のステージバリエーションがあるのだが、ハイスコアはバリエごとの個別ではなく共通となっている。3種のバリエーションのうち「どれが一番稼ぎやすいか」を考える必要がある。ステージ選択画面からもう「選択」が始まってるのだ。
将棋は、つい最近までAIが人間に勝てなかったという。その理由として「持ち駒の要素のせいで手の可能性が天文学的な量になるため」という話を読んだ。マリオランの攻略も、これに近いものがあると思う。
さらなる深淵「キノピオラリー」モード
非同期対戦となる「キノピオラリー」モードも、極めようと思えば相当奥が深い。それこそワールドツアーが比べものにならないレベルだ。ワールドツアーの違いは「ゴールが存在しない」「ステージが自動生成される」点と、様々な追加ルールだ。ルールの詳細は省くが、結論だけ言うと、プレイヤーは制限時間60秒の間に以下の事を同時に行わなければならない。
- コインをなるべく沢山取る
- なるべく沢山のアイテムを取得する
- なるべく早く右に進む
- なるべく多くの敵を倒す
- なるべく沢山のアクロバットアクションを行う
敵を倒しつつコインを効率良く取れるルートを考えるのはワールドツアー同様だが、その間に「アクロバットアクション」を織り込んでいかなければならない。かつ、相手よりも早く進む必要がある。全てを完璧に両立するのはもう不可能だ。
しかも、上で説明したとおりコースは毎回自動生成されるため「覚え」が通用しない。その場その場で適切な判断をしながらアドリブで進んでいく。マリオが勝手に走っていく。プレイヤーに洪水にように畳みかけてくる「判断」「判断」「判断」。その情報量の多さに、しばらくプレイしていると頭のあたりがほかほかしてくるほどだ。
すばらしき上達の快感
キノピオラリーモードはステージ自動生成と書いたが、ワールドツアーモードのステージを切り貼りした作りとなっており、ある程度の法則性がある。このため、何度もプレイしてコースの部品を覚え、「この地形ならこの動きが効率が良い」という感じで「セットプレイ」ができるようになってくる。最初は死なずに走るだけが精一杯だったのに、習熟してくると心に余裕が生まれ、合間合間にアクロバットを挟むことができるようになる。敵の配置を覚えて連続で踏んでいく。そのプレイはまるでスーパープレイヤーのように華麗なのだ。
キノピオに応援されながら走り、ライバルを打ち負かしてごっそり奪う。走る快感、勝つ快感。この感覚は紛れもなくヘビーゲームのものだ。それがワンボタンゲームによって生み出されていることを時折忘れてしまう。
Phil Co
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全く同感です。
返信削除任天堂の開発力、恐るべし。
スマホのような制限の多いハードであればあるほど、
メーカーの開発力が試されます。